このレジュメは、メディアと経済思想史研究会事務局の要望にしたがって、原稿化する予定です。

ということで、完成原稿はこちらです。

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一部、誤字・脱字があります。
 歴史学系ウェッブサイトの現状と問題点
鵜飼政志
はじめに

●報告者は情報処理などの専門家ではなく、歴史学研究者にすぎない(専門は明治維新史・19世紀末のイギリス極東関係史)。本報告は基本的には体験談。
●その一方で、「歴史学関係ウェッブサイト調査」なるウェッブサイトを開設して、日本にどれくらいの歴史学系ウェッブサイト(あくまで学術サイトのみ)が存在するか調査し、「歴史学関係リンク集」として公開している。
●その後、『歴史評論』(歴史科学協議会編集の月刊誌、校倉書房刊行)編集委員をやっている関係で、同誌第578号(1998年5月発売)の特集「歴史学とインターネット 1」の企画編集に共同参加。続いて、第594号の特集「歴史学とインターネット�U」を責任企画編集する(単独企画)。この間、歴史科学協議会のウェッブサイト開設など、いくつかの学会サイト運営に関係する。この経験からすれば、体験談にも多少の意味はあるか?
●「歴史学関係ウェッブサイト調査」開設の動機:『歴史評論』第578号(1998年5月発売)のインターネット特集企画時に、ウェッブサイトリストの作成を依頼され、そのための調査として自らウェッブサイトを開設。
●インターネット上に歴史関連のサイトは星の数ほど存在する。しかし、その大部分は趣味で作成されたもので、学術研究にたえうるサイトがどの程度存在するのか調査するというのが、「歴史学関係ウェッブサイト調査」開設時の動機。当時、インターネット上における歴史学系の学術サイトを、歴史学研究者の視点から抽出して、網羅的に集めた専門リンク集は存在しなかった。そのためか、多くの学術機関や研究者からのアクセスが集中することに。
●ウェッブサイト運営の過程において、歴史学研究者をはじめとした研究者と交流をはかることに(いわゆるメル友?)。さらに、大学研究室や学会サイトを運営している研究者たちとも、ウェッブサイトを介して、また諸学会開催時において知り合うことになり、研究者(研究機関)とウェッブサイト運営の関係・意味・問題点について議論することが多くなる。
●『歴史評論』578号のインターネット特集は、その後一部編集方針が変更になり、急遽、報告者が同特集に「日本の歴史学研究におけるインターネット利用の現状」(拙稿A)を寄稿することに。利用する側からみた歴史学系ウェッブサイト開設の現状(1998年時点)を紹介。
●約1年後、急増した歴史学系ウェッブサイトに対して数多くの問題点が生じていることを感じ、『歴史評論』編集委員会に、インターネット特集その後について何か執筆したいと提案したところ、諸々の事情がかさなり、特集としての企画を依頼される。これが第594号の特集「歴史学とインターネット 2」である(ただし、これは個人サイトの現状や電子目録の思想などにテーマを絞っているので、小特集というべき)。そして、同特集内で、「歴史学関係ウェッブサイト開設の現状と問題点」(拙稿B)を執筆し、1999年における歴史学系ウェッブサイト開設の現状と、そこに包含されている問題点を指摘した。 本報告は、拙稿Bの内容を基本とし、これに拙稿Aの内容や、拙稿Bではあえて言及しなかった点などで補足したものである。

 歴史学系ウェッブサイト開設の現状 日本の歴史学研究におけるインターネット利用の現状(1998年あたりまで)

●1995〜6年あたりから普及してきたインターネット、歴史学の世界も例外ではない。しかし、史料・図書管理やデータベース開発を目的とする文書館・資料館・図書館などの技術管理担当者が先導するかたちでおこなわれる→技術開発論が中心・主要研究機関とその周辺においてのみ(もちろん例外はある)接することのできる、歴史学研究とインターネットに関する議論。(文字コード・画像史料の提供方法に関する議論に典型)※歴史学系にかぎらず、図書情報データベース開発は比較的歴史が長くは、既に10年以上前から一部のパソコン通信・一部の研究機関間による学術ネットにおいて利用可能であった。この点にだけ注目するなら、インターネットも、既存のデータベース開発・図書情報提供手段の新たな媒体として注目されたにすぎなくなる。

※史料を研究の大前提におくのが歴史学研究と解するなら、インターネットはたんにデータベースや図書情報を便利に提供してくれる手段にすぎないと解釈するのも当然か。
※当時、個人的にウェッブサイトを開設し、独自に情報を提供したり、電子メールなどで情報交流をはかったりする歴史学研究者は僅少(ほとんどいなかった)。インターネットに興味を示した研究者も多かったが、むしろそれは趣味の次元。

★歴史評論が1998年度のインターネット特集を企画したのは、1997年春から夏にかけて。その動機も、主要研究機関や一部研究者で議論の盛り上がっていた歴史史料データベース開発などに関する技術論への関心にあった(研究者から多くの意見が寄せられる)。こうした議論は、史料管理学の範疇で真剣におこなわれたものであったが、これが歴史学研究全般とどう関連するのか、またインターネットを介しておこなわれるべき学術交流といかに関係するのか、企画担当者たちの間で整理できていなかった。

1 インターネットは新たな歴史史料提供手段の一つとして理解すべきか
2 歴史学研究は、現在をインターネット時代と定義するなら、それにみあった新たな学問スタイルを構築すべきなのか 

★この2つの仮説は、究極的には連関するものだろうが、歴史学研究においてそれを簡単には説明できない。史料を素材に過去を問うのが歴史学(文献史学)であるが、その関心・究明課題は現代にある。しかし、インターネットという近代科学技術における一つの到達点が現在社会を変貌させてきているとしても、そこから派生する関心をすべての歴史(過去)に適用することには無理がある。特に古代史や中世史研究に対して、インターネットが有効であるなら、それは結局、有限な史料を便利に提供する手段で十分と考えても無理はない。

1998年以降の新傾向
 しかし、1998年夏あたりから、多くの研究機関や大学研究室、諸学会、そして個人が独自にウェッブサイトを数多く開設するようになってきた。それはなぜか?何の目的でか?史料公開、研究成果の公開(これには既存の学問スタイルが構築した制限がつくはず)のため?広報目的(大学の場合、大学全体の広報サイトが存在するし、学会の場合、入会制限などをしている学会でも参加を募る内容でサイトを開いている)?動機が不明なものが多い。

 歴史学系ウェッブサイトの紹介
1 研究機関(簡単に)
 まとまって歴史史料をネット上に公開している歴史学系研究機関 東京大学史料編纂所、京都大学人文科学研究所、国立歴史民俗学博物館、国立国文学研究資料館など(以前からのおこなわれてきたデータベース開発の成果) その他、数多くの研究機関がウェッブサイトを開設し、広報ページはもとより、またなんらかのデータを公開しているが、その規模はさまざま。これらは研究機関の方針や予算、人員配置の問題などが関係しているようである。 
2 大学研究室(歴史学関係の大学各単位における)
ほぼ1998年初頭までに本格的(内容豊富)なサイトを開設していた大学研究室(抄)
 東北大学文学部日本思想史研究室(定期的な更新・文献目録などを提供)
 慶應義塾大学文学部日本史学専攻(データ古い)
 慶應義塾大学経済学部杉山伸也研究会(内容豊富だが、データ多少古い)
 大阪大学文学部西洋史研究室(現在はリニューアルのため閉鎖中)一人の教員が担当
 大阪大学文学部東洋史研究室(定期的な更新)学生による自主運営
 大阪大学文学部考古学研究室
 岡山大学文学部日本史学研究室・岡山大学文学部考古学研究室
 島根大学法文学部歴史社会教室(現在では更新データがばらついている)
1998年夏頃以降に本格的なサイトを開設した大学研究室(抄)
 千葉大学文学部史学科(詳細な学科紹介)一人の教員が担当
 早稲田大学第一文学部東洋史学専修(定期的な更新)助手が担当
 早稲田大学第一文学部西洋史学専修(教員・院生の紹介など、データ古い)助手担当?
 早稲田大学大学院文学研究科日本近世史ゼミ(深谷克己・紙屋敦之ゼミ共同ページ)
  ゼミ紹介、研究成果紹介など、各ゼミの院生が担当

 明治大学文学部山田朗ゼミ(ゼミ紹介、一時閉鎖・最近復活)
  ゼミ紹介であるため、年度変わりで全データを更新するとのこと、学部生の担当者交代に失敗
 明治大学文学部吉村武彦ゼミ(ゼミ紹介、学部生・院生紹介) 現在、開店休業状態。担当院生の就職による。
 日本女子大学文学部史学科(研究室の概要・教員紹介) 開設されたばかり
 立教大学文学部史学科(画像を使った教員紹介など独自のコンテンツあり)
 学習院大学文学部史学科(詳細な学科・大学院紹介)卒業生が内容作成
 日本大学文理学部史学科研究室(研究室の概要など)助手担当
 東京女子大学文学部史学科研究室(研究室の概要のほか事務関係)事務職員担当
 名古屋大学文学部日本史学研究室(詳細な研究室の活動紹介・院生紹介など)
  本来、サイト管理グループを結成していたが、結果的に、実質一人の院生が担当
 金沢大学文学部西洋史学研究室(現在、閉鎖中)院生担当のため、年度交代の影響
 熊本大学文学部歴史学科(学科全体の紹介、データ古い)

 番外編! 成蹊大学経済学部松本貴典ゼミ 面白い!

 *豊富なサイトを構築している一方で、更新されないデータ
 *誰がサイト運営を担当するかに大きく作用されている(運営方針の不明確化)
 *院生作成の場合、数ヶ月で閉鎖状態となっているものは少なからず存在する
 *教員が作成している場合、公務の影響されてか、突然データ更新が中断する
 *事務職員など大学当局が作成に関わる場合、ありきたりな内容となっていることが多く、独自に研究室がサイトを開設する意味をどこまで問えるのか疑問を抱くことも多い
 *退職したり、転任した教員の業績・修了した院生の業績紹介がメインコンテンツとなっているものをみてどう思うか?不正確な情報発信

 3 学会
 1998年春あたりまで、ある程度内容あるコンテンツを有していたもの
 中国現代史研究会(大阪外国語大学サーバ、データ古い)
 東南アジア史学会(学術情報センターサーバ、詳細な内容)東京外国語大学発信
 アメリカ史研究会(一橋大学サーバ、活動紹介、更新は遅いが内容は正確)
 スペイン史学会(学術情報センターサーバ、文献目録などオリジナルコンテンツ)
 ロシア史研究会(※小規模学会・研究会は除く)

 1998年夏以降増加

文部省学術情報センター「WWW資源情報提供サービス」の影響?
「学会ホームページビレッジ」 ただしサービス自体の認知度低い。
 歴史科学協議会(学術情報センターサーバ、会誌と大会情報が主)
  鵜飼の担当、誌面で公開していた情報を、一足早くネット上で公開
 歴史学研究会(学術情報センターサーバ)
  委員の一人が担当、更新されないことが問題だったが、最近ではマイナー更新を繰り返している
 歴史学会(学術情報センターサーバ)
 交通史研究会(学術情報センターサーバ)
 全史料協・全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(学術情報センターサーバ)

●会員所有のインターネットアカウントからの発信(個人発信形態だが、公式サイト) 内容豊富なことが多い。
 朝鮮史研究会(京都大学人文科学研究所水野直樹氏)多数のデータベース、文献目録
 東欧史研究会(千葉大学小沢弘明氏)詳細な文献目録、膨大な専門リンク集
 ほかに、スイス史研究会、オランダ史研究会、日本思想史研究会など

*一部には個人アカウントからの発信を問題視する人がいるが、では学術研究(交流)団体がどうやってアカウントを所有するのか?財政問題は?という混迷的問題に陥ることになる。現状では、むしろ内容豊富になることも多いので賛同すべき。

 4 個人

 研究者の個人サイトは多いが、学術的見地に達しているものは多くない。 開設者が大学教員である場合、研究室サイトや学会サイトを兼任していることが多い。
 1998年以降に開設された個人サイト(サイト名は省略)
 伊藤俊一氏(名城大学)日本中世史 中世史研究の手引きなど内容豊富
 高橋秀樹氏 日本中世史 目録など詳細
 渡邊大門氏(京都産業大学)日本中世史 基本的には目録のみ
 杉本史子氏(東京大学) 日本近世史 研究プロジェクトの成果紹介・業績紹介
 江森一郎氏(金沢大学) 日本教育史関係 リンク集や掲示板がメイン
 林博史氏(関東学院大学)日本現代史 現代史関係・戦争責任論関係情報が豊富
 鈴木亮氏  歴史教育 開設者の50年近い学問系譜の紹介

 個人サイトの分類
 A 個人の履歴・業績紹介が主たる目的で、その一環として、大学講義を補完する文献リストな研究入門ページなどを併設したもの
   伊藤俊一氏 馬場章氏(東京大学、日本近世史) 櫻井良樹氏(麗澤大学、日本近代史) 加藤哲郎氏(一橋大学、政治学・日本現代史) 水野直樹氏(京都大学、朝鮮近現代史) 林善義氏(名古屋学院大学、アジア経済史) 中村宗悦氏(大東文化大学 日本経済史) 杉田米行氏(大阪外国語大学、アメリカ史)、高山博氏(東京大学、西洋中世史)

 B 研究成果や編纂資料目録の公開が主たる目的で、これをひたすら追求したもの
  渡邊大門氏 杉本史子氏 横山伊徳氏(東京大学)

 A Bに分類されるサイトは、大学院教員・研究員、大学院生から民間研究者まで発信者まさまざまで、サイト開設の動機もさまざま。しかし、目的が明解であること、個人サイトであるため多くは随意更新されるので、有用であることが多い。→こうしたサイトが増加すれば、歴史学の研究スタイルに影響を与えるであろう(史資料や目録情報の入手に要する所要時間の軽減化)

  C 研究者であるが、純粋に個人の履歴・業績・趣味の紹介を動機としているもの
  保立道久氏(東京大学、日本中世史) 桂島宜弘氏(立命館大学、日本近世史)
 東京大学史料編纂所個人サイトにこの分類が多い。奨励されたため。ただし、一部を除きほとんど更新は止まっている(多忙なため、興味が薄れたため)。上記は例外。
  大多数は内容に乏しい、長期間更新されていない(まったく更新しことがない)ものが多い→何のために開設されたのか疑問。時流に乗ったにすぎない要素が強い。しかし、発信者が著名な研究者であったりするため、ネット上で不思議な評価を受けていたりする(古すぎる情報や誤った情報(誤植)などがそのまま信用される)。

  D 地方の民間研究者が開設した、徹底的に地方史研究にこだわったサイト
 学術見地に達していたり、客観的な分析が加えられている場合は、こうしたサイトは有用な情報となることが多く、インターネット時代の歴史(学)研究が生み出した一つの成果といえよう。 しかし、大部分は趣味の世界に完結していたり、一地方に対する情念的思い入れ(地域ナショナリズム?)が強すぎるものが多く、研究に値する情報にはなっていないことが多い。趣味と研究の区別がつかないものが多すぎる(ハンドルネームによる発信の多さに典型)。

「研究とは趣味でおこなうものである!ハンドルネームで何が悪いのか?問題が起きたらどうするのか?」
→研究活動とはまったく逆の主張、これに気がつかない発信者多し(引用は、拙稿Bに対して寄せられた抗議メールの要旨)。

  その他−出版社・書店
 歴史学研究に関わる、その他サイトの特徴として、出版社・書店関係のウェッブサイト増加を指摘しておく。ウェッブサイト開設は、販売促進を目的とした出版業界全体のカルテル的行動のようだが、書誌情報が増えることは歓迎すべきこと。歴史学関係の地方出版社や小規模書店のなかには、独自にウェッブ上からも歴史学研究活動を支援するようなコンテンツを開設しているものもある(例 岩田書院−地方史研究情報・学会情報など)

 いくつかの問題点の紹介

1 研究機関
 現実にはネット上で利用できる史料はごく一部にすぎない。今後の発展が望まれるが、現状では、各機関の対応度に差異がありすぎるので、前途多難な要素もある。ただし、確実に電子資料館的なサイトが増えているものたしかである(例 法政大学大原社会問題研究所)。
 むしろ、問題は資料目録やデータベースなどの利用方法や分類基準が、すべて各研究機関の開発方法の違いからか一様でないことである(だからといって、図書分類方法などに従っても有効なのか?)。利用する側には決定的な問題点。
 目録作成やデータベース開発の途上で、利用する側の問題点は考慮されないことが多い。電子目録・データベース作成に対する思想の欠如?(西洋諸国と決定的に違う、資料は市民に公開・利用に付すものではなく、所蔵機関の好意や方針によって、好意的かつ特別に閲覧させているという発想が強い)→資料保存・編纂そのものに関わる重要な問題といえる。

2 大学研究室
 大学サイトには、入学案内や総合案内などがまず存在することが多い。研究室サイトが総合案内を構成するならよいが、そうでない場合、なぜ研究室がサイトを開設するのか? 「より研究室の雰囲気を知ってもらうため?」
●多くの大学サイトは、大学という組織のなかに存在するわけであり、まったく自由に情報を発信されては困る(大学の利益を侵害するような不都合な情報は困る)という見解。
●近年、大学サイトに多くみうけられるようになった但し書き「各部局以下の情報は、大学当局とは何の関係もなく、問題が生じても責任を負うものではありません」
●掲示板などの設置を認めない大学サイト多い(相互の権利を保護できないため)
「本サイトは大学公式サイト内にあるので、詳しいことはお話できませんが.......」
→そのなかで発信される研究室の情報・雰囲気とははたして正しい情報か?
→都合のよい情報ばかり発信することで、ただの権威づけになっていいのか悪いのか? 

★大学組織の利害と各研究室のウェッブサイト運営方針をいかに調整すべきか難問。★ウェッブサイト開設は、既存研究機関のなかで学問・教育のあり方を見直すきっかけかもしれない。このことは学会の場合にもあてはまる。 

3 学会
学会は組織であり、その学術創造活動には責任を負うべきであるという常識を、そのままウェッブサイトに適用できるのか?←インターネット時代における歴史学のあり方に逆行する考え方。
 学会サイトはどこに設置するのか?(事務所などを所有する学会は僅少という前提) 
〜大学サイトだと研究室内のコンテンツとなる
〜民間プロバイダの場合だとその財政支出をいかに解決するのか
★いずれにしろ、サイト作成は大学サイトまたはプロバイダでアカウントを貸与されたものとなるが、そこから発信される情報は、学会員個人の学会観に左右されていないか? 〜ならば、ホスティングや自前サーバとなるが、それを管理できる知識のある人間がいるのか?また財政支出は年間数十万円となる。これにたえうる学会がどれほど存在するのか?
※結局は、現実的な対応をはかっていくしかない。
何のために、学会がサイトを開設するのか?不明確なサイトが多い。
〜会の活動を広く知ってもらうため?
 広くといっても、それは誰を対象としているのか?
〜会員拡大活動のため?
  学際的な学会や歴史全般に関する学会はともかく、特定分野や時代などを対象とする学会・研究会が、あえてインターネット上で勧誘活動をおこなう必要があるのか(通常、入会方法にオンラインという手段を設けている学会はないし、オンライン入会を可能とするためには会則改定が必要となるはず、さらにいえば入会に際して資格を設けている学会などに至っては?)
〜学会内の活動を活性化させるため?
だとすれば、相当なコンテンツ作成に関する議論が必要だし、研究目録や会員成果公開となると、それはさまざまな権利の問題が生じ学会内だけの問題にとどまらなくなってくる。
ウェッブサイトは個人で開設すべきか?活動グループを結成すべきか?
 現実を考えれば、作成技術があり会の活動に精通している個人に全面委任すべき。コンテンツの分担作成ならそのかぎりでない。発信される情報に対する責任問題云々をどう解決するかという意見を耳にするが、結局、ネット上に慣行やHTML作成の知識がない人間にサイト運営に介入させる権利を与えると、現状ではさまざまな対立が生じてくる(視覚的効果の強いネット上の文章と、通常の誌面上の文章では、読者に対する受けとめ方が違ってくるし〜同じ表現であるべきでないし、また表示できない漢字は依然として存在するという常識を知らない人が多い)。会誌編集と同じ感覚でサイト運営はできないし、会誌など既存メディアとの関係をどうするのか?
時として疑うべき内容の学会サイト
 日常的に活動している学会は数少ないはずである。にもかかわらず、時として美辞麗句にちりばめられているサイトをみかける。そういったサイトを運営している学会の現状を知っていると、研究者の倫理を疑ってしまわずにはいられない。
●結局、既存の組織体制における常識をネットにそのままあてはめると、学会内に亀裂を生じさせるともかぎらなくなるか、たんなる学会上層部による都合のよい情報発信にしかすぎなくなる。現状では、正しいネット上の知識を習得しながら、学会としてできること、できないことを正確に理解し、現実的なサイト運営にあたるべきであろう。

4 個人(諸刃の剣としての個人による学術サイト)
●有益な情報を、速効的に提供する学術サイトの中心である個人サイト
●不正確かつ無責任な学術情報を増幅させる存在としての個人サイト(マイナス的要因)
●最低限のモラルとして、ハンドルネームを使用しないこと。研究者のみに学術情報を発信する権利があるわけではないが、発信する情報を学術的なものと、発信者側が認 識するかぎりにおいては、責任の所在を明確にすべきであろう。
●研究者の権利・保護関係を脅かす存在としての個人サイト ・研究成果公開 ・発表論文の全文公開・個人データベース(史料目録・文献目録) 既存の著作権や知的所有権を無視しているものが多い。では、逆にネット上における権利関係はどうなるのか?(結局は、法体系の整備を待つしかないのか?)

おわりに(個人的な意見)
●ネット上における研究活動の一環としての情報発信にネチケット(これも一種、権力側の創出したマナー)を適用しすぎると、学問の自由を保証できなくなる。しかし、不正確な学術情報も、極論すれば学術ウィルスと違いはない。ここらあたりが、インターネット時代における歴史学にかぎらない学術研究のあり方が包括する究極の問題点ではないだろうか?インターネットが社会に普及した背景には、それが権力者の独占媒体でなくなったことにある。とすれば、無秩序な情報発信は認められないにしろ、現状においては各自が自己責任においてインターネット上に学術研究の見地にてらした常識を創造し、それをもって情報を発信(サイト運営)するしかないのかもしれない。
●結局は発信する側も、発信情報を利用する側も、現状では、自己責任において対応するしかないであろう。インターネットの発信する情報が既存の学問を変える可能性を有しているいっても、歴史学研究の場合は、いくらインターネット技術が発達しようと、歴史資料を素材としておこなう学問である以上、まだまだ解決すべき点が数多く残されている(例えば画像データベースを作成したとしても、それをどの権利において、いかに発信するのかなど)。さらに、まだまだまとまった研究をおこなうだけの情報が整備されているとは言い難い。インターネットを利用した歴史学研究は、現状で可能とはいえないであろう(多少の便宜が提供されたという程度)。ならば、さしあたりは既存の学術研究世界との共存をめざしながら、歴史学研究におけるインターネット利用の問題を引き続き検討していくしかないであろう。

報告中紹介したサイトのURLリスト
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